
AIで変わる介護業界の施設運営:業務負担の削減とケアの質向上を実現
介護現場のICT活用による業務効率化のポイントとは? 導入事例から補助金情報まで解説
※本記事は2025年11月13日時点の情報を元にして作成されています。
介護現場における深刻な人材不足は、多くの事業所にとって喫緊の経営課題です。いわゆる「団塊の世代」が75歳以上の後期高齢者となる「2025年問題」が現実となり、業務効率化と職員の負担軽減は、事業の存続そのものに関わります。
多くの施設が「介護記録」や「見守り」の効率化に着目しますが、介護業務全体の約3割を占めるとされる「送迎業務」の負担が見過ごされがちです。送迎計画の属人化や非効率なルート設定は、職員の残業や疲弊の温床となっています。
本記事では、介護現場へのICT導入の基本から、見落とされがちな送迎業務の課題解決、さらに補助金情報まで、導入判断に必要な知識を網羅的に解説します。
目次
介護現場へのICT導入とは、『情報通信技術を活用し、業務効率化やケアの質向上を支援する機器やソフトウェアを導入すること』です。導入が急務とされる背景には、避けて通れない3つの社会的課題が存在します。
いわゆる「2025年問題」とは、団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となり、社会保障費の急増や労働力不足が顕在化している問題です。介護業界では、サービス需要が最大化する一方、生産年齢人口の減少により、介護職員の不足がますます深刻化します。
厚生労働省が第9期介護保険事業計画に基づき公表した推計では、2026年度には約240万人の介護職員が必要とされるのに対し、2022年度時点では約215万人にとどまり、約25万人が不足すると見込まれています。
参考:介護人材確保に向けた取組について|厚生労働省
限られた人員で増え続ける需要に対応するには、従来の労働集約的な働き方から脱却し、テクノロジーの力で生産性を向上させることが不可欠です。
人材の「採用」が困難である以上、既存の職員にいかに長く働いてもらうか、つまり「人材の定着」こそが最重要の経営課題です。
介護現場へのICT導入の重要な目的は、介護スタッフの業務負担を軽減することにあります。物理的な労働時間と精神的な負荷の両方を削減することで、職員が本来のケア業務に集中できる環境が整い、離職防止や採用コストの低減にも繋がります。
介護現場へのICT導入は、職員の負担を軽減するだけでなく、最終的に利用者の利益、つまりケアの質の向上に直結します。
従来、介護現場では「手厚いケア」と「職員の負担」はトレードオフの関係にあると考えられがちでした。しかし、テクノロジーはこの二律背反を解消します。
介護現場へのICT導入と一口に言っても、その種類は多岐にわたります。ここでは、介護現場が直面する具体的な業務課題と、それを解決するICTの分野について解説します。
介護現場では、日々のケア内容や利用者の状態を手書きの帳票で記録しているケースが今なお多く存在します。
手書きは、転記ミスや読み間違いの原因となるだけでなく、記録作業そのものに時間がかかります。
職員間の申し送りも、口頭や電話に依存していると、情報の抜け漏れや「正確に伝わったか」という不安が常につきまといます。
こういった課題を解決するのが介護記録システムやチャットツールといったICTです。
スマートフォンやタブレット端末から直接入力することで、転記作業が不要になり、記録業務が大幅に効率化されます。
また、チャットツールの導入により、文面で正確な情報をやり取りできるため、サービス責任者とスタッフ双方のストレスが減少したという事例も報告されています。
特に夜間の見守り業務は、職員にとって大きな身体的・精神的負担となります。定期的な巡回が必要であり、その間にも利用者の転倒事故などが発生するリスクがあります。
見守り支援システム(センサーやカメラ型)は、こうした負担とリスクを軽減します。
センサー型のシステムは、利用者のベッドからの離床や体動を検知し、職員に通知することで、転倒などのリスクが高まるタイミングを事前に把握できます。
これにより、定期的な巡回の回数を減らしながらも、本当に必要な時に適切な介助を行うことが可能となり、職員の負担軽減と利用者の安全確保を両立させることができます。
介護事業所は、早番、日勤、遅番、夜勤など、24時間365日の複雑な勤務体系を組む必要があります。Excelなどで勤務シフトを作成する場合、職員の希望休や必要な人員配置を考慮しながら組む作業は膨大な時間がかかり、特定の職員(リーダーなど)に業務が集中しがちです。
こうした課題には、勤怠管理・給与計算システムや勤務シフト自動作成システムの導入することで、従来Excelでの作成にかかっていた時間が大幅に短縮することができます。
システムが客観的で公平なシフトを自動作成するため、特定のリーダーの負担が減るだけでなく、業務の引継ぎが容易になるという効果も生まれています。
介護記録や見守り、シフト作成のICT化が進む一方で、多くの事業所で見落とされがちな重要な領域があります。それが「送迎業務」です。送迎業務のICT化こそ、介護現場の生産性向上に不可欠な取り組みと言えます。
送迎業務は「介護」そのものの業務ではなく、「移動」という付帯業務として捉えられ、改善の優先順位が低く設定されがちです。しかし、実態は全く異なります。送迎は、利用者の朝の体調確認、乗降時の介助、ご家族との重要なコミュニケーションの場であり、高度なスキルが求められる紛れもない「介護業務」の一部です。
こういった業務が非効率なまま放置されることは、経営上の大きな損失に繋がります。
経済産業省の調査によれば、通所介護(デイサービス)における送迎に付帯する一連の業務量は、介護業務全体の「約3割」にものぼるとされています。
参考:将来の介護需要に即した介護サービス提供に関する研究会報告書|経済産業省
送迎業務の約3割という数値は、単一の業務としては最も大きな割合を占めるものです。
介護報酬が固定されている中で事業所の利益を確保するには、生産性の向上が不可欠であり、この大きな割合を占める送迎業務の非効率性を放置することは、事業所の収益性を圧迫する最大の要因の一つと言えます。
送迎業務が抱える最大の問題は「属人化」です。送迎計画の作成は、日によって変わる利用者の状況や、利用者同士の相性、最適なルートなどを考慮する必要があり、「ベテラン職員の経験に依存する割合が多い業務」となっています。
実際の現場でも、「送迎計画を作成できる職員がわずか2名」、「限られた担当者が1時間ほどかけて作成」といった状況が常態化しています。
この属人化は、単に時間がかかり非効率である問題に留まりません。ある施設では、担当者が「休日でも対応せざるを得ない状況」が発生し、深刻な労働問題となっていました。
これは「事業継続リスク」そのものです。その特定のベテラン職員が病気や退職で突然いなくなれば、翌日の送迎が組めなくなり、事業所運営が停止する危険性をはらんでいます。
前章までに解説した「全業務の3割」を占める送迎の負担と、「事業継続リスク」とも言える属人化。この介護現場最大の課題を解決するソリューションが、パナソニック カーエレクトロニクスの『DRIVEBOSS(ドライブボス)』です。
『DRIVEBOSS(ドライブボス)』は、介護施設の送迎業務を効率化するために開発された、クラウド型の自動配車サービスです。複数の利用者を複数の車両で送迎する業務計画を、短時間で自動作成する機能を備えています。
これまでExcelやホワイトボード、あるいはベテランの「勘」に頼っていた複雑な業務を、デジタル技術で一元的に管理します。
『DRIVEBOSS(ドライブボス)』の中核機能である送迎計画自動作成システムは、送迎計画の属人化リスクに対する直接的な解決策となります。
利用者の情報や車両の条件を登録するだけで、システムが最適な送迎ルートと順番を自動で算出します。
従来Excel(表計算ソフト)を使い30分から1時間かかっていた送迎計画の作成が、『DRIVEBOSS(ドライブボス)』の導入により大幅に短縮されます。
単なる時間短縮だけではなく、ベテランの「職人技」を「標準化」することを実現します。
『DRIVEBOSS(ドライブボス)』の価値は、計画作成時間の短縮だけに留まりません。スマートフォンとの連携機能が、送迎業務の「実行」と「管理」の質を劇的に向上させます。
作成された送迎計画はスマートフォンに配信され、そのまま「ルート案内機能」として使用できます。また、利用者ごとの送迎時の申し送り事項もスマートフォンで確認できるため、ドライバーは必要な情報を手元で把握しながら業務にあたることができます。
これらの機能により、従来は「送迎練習」に時間を割いていた新人や異動者でも、即戦力として送迎業務にあたることが可能となり、「教育コスト」の大幅な削減に繋がります。
さらに、運転中の「急加速・急減速」を検知・記録する機能も備えています。これにより職員の安全運転への意識が向上し、送迎中の事故という事業所にとって最大の経営リスクの一つを予防する効果が期待できます。
『DRIVEBOSS(ドライブボス)』は、すでに多くの介護事業所で導入され、深刻な課題を解決しています。ここでは、具体的な3つの成功事例を紹介します。
・導入前の課題
1日平均約20〜30名の利用者を4台の車両で送迎していた同施設では、送迎計画の作成がベテラン職員「1名」に集中し、作成にも1時間ほどかかるなど、深刻な属人化が課題でした。
・導入後の効果
『DRIVEBOSS(ドライブボス)』を導入した結果、送迎計画を作成できる職員が「1名から5名に増加」しました。
これにより、特定の職員が休んでも業務が滞るという事業継続リスクが解消されました。また、スマホ連携機能の活用で、送迎時の急加速・急減速が削減され、安全運転への意識も向上するという副次的な効果も得られています。
詳しくは以下のページをご覧ください。
介護老人保健施設太郎 様 │ 属人化解消と安全運転への意識向上!送迎システムのドライブボス
・導入前の課題
送迎計画作成が「職人技」のような業務で、各事業所でセンター長の補佐などキーマン的な職員が担当し、計画作成と実績入力に毎日2時間程度を要していました。新しい利用者の送迎や土地勘のない職員の送迎時には、事前に現地まで車を走らせて練習が必要でした。
・導入後の効果
相模大野センターでは送迎計画の作成時間を半分に短縮し、計画作成できる人数も4人にまで増加しました。
初めて訪問する利用者宅でもスマートフォン連携のルート案内機能で問題なく送迎できるようになり、業務プロセスが統一され、応援や異動があっても即戦力として業務にあたれるようになりました。
詳しくは以下のページをご覧ください。
ケアパートナー株式会社 様 │ 業務の標準化で異動者の即戦力化を実現!送迎システムのドライブボス
・導入前の課題
同センターでは、計画作成者が2名に限られ属人化していた上、Excelでの作業に30分から1時間を要していました。データの入力ミスや抜け漏れが発生するだけでなく、エラー発生時には担当者が「休日でも対応せざるを得ない」という深刻な業務負担が発生していました。
・導入後の効果
『DRIVEBOSS(ドライブボス)』導入後、計画作成時間は15分から30分ほど短縮され、休日対応も解消しました。さらに、新たに1名が作成者に加わりました。
特筆すべきは、そのシンプルな操作性により「パソコンが苦手な高齢の職員でも対応ができるようになった」点です。担当者からは「以前のやり方には戻ることができない」という声が上がるほど、現場の負担軽減に直結しています。
詳しくは以下のページをご覧ください。
春日丘荘デイサービスセンター 様 │ 送迎業務の効率化で属人化を解消!送迎システムのドライブボス
介護ICT導入の最後の障壁となるのが「導入コスト」です。しかし、国や地方自治体による手厚い補助金制度が用意されており、活用しない手はありません。
厚生労働省や各都道府県では、「介護テクノロジー導入支援事業」や「介護ロボット導入支援事業」といった名称で、ICT機器やソフトウェアの導入を支援する補助金制度を実施しています。
参考:介護テクノロジー導入支援事業|厚生労働省
これらの制度は、介護現場の生産性向上や業務負担軽減を目的としています。
補助の基準額は、事業所の規模(職員数)によって異なります。令和7年度の国の基準では、以下のように設定されています。
・職員数1名〜10名:100万円
・職員数11名〜20名:150万円
・職員数21名〜30名:200万円
・職員数31名以上:250万円
ただし、実際の補助率や運用については各都道府県で異なる場合がありますので、詳細は各自治体の最新情報をご確認ください。
補助金の対象は、見守りセンサーや移乗支援ロボットといったハードウェアだけではありません。
多くの自治体では、補助対象事業の一つとして「介護テクノロジー導入支援(介護業務支援)」が挙げられており、これは「介護ソフト等の導入」を指すと具体的に明記されています。
『DRIVEBOSS(ドライブボス)』のような送迎計画自動作成システムも、この「介護業務支援」のための「介護ソフト」として補助対象となることがあります。
補助金を活用する上で最も重要な注意点は、「機器の導入・支払いを完了した後」に申請しても受理されないことです。必ず「事前協議」や「交付申請」といったプロセスを、定められた期限までに行う必要があります。
申請の流れや期限は自治体によって異なるため、導入を検討する場合は、お住まいの都道府県や市町村の担当窓口に早めにお問い合わせいただき、最新の情報をご確認ください。
介護現場へのICT導入は、深刻な人材不足の時代を乗り越え、職員の負担を軽減し、利用者の安全とケアの質を高めるための、不可欠な経営戦略です。
多くの施設が見落としがちな、全業務の約3割を占める「送迎業務」の非効率性と属人化こそ、ICT化によって大きな改善効果が期待できる領域の一つです。
導入費用に関しても、国や自治体の補助金制度が充実しており、負担を軽減できる機会です。まずは、自施設の送迎業務が属人化していないか、現状把握から始めることを推奨します。
この機会にぜひ『DRIVEBOSS(ドライブボス)』の詳細をご確認いただき、デイサービスの送迎業務への導入をご検討いただくことをお勧めします。
気になることがございましたら、お気軽にお問い合わせください。専門スタッフがご対応いたします。
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