介護現場のICT活用による業務効率化のポイントとは？ 導入事例から補助金情報まで解説
AIで変わる介護業界の施設運営：業務負担の削減とケアの質向上を実現
※本記事は2025年11月13日時点の情報を元にして作成されています。
介護業界は、深刻な人手不足と高齢化の進行という二重の課題に直面しています。現場スタッフの負担は増大し続け、従来の体制維持は限界に近づいています。この状況を打破し、持続可能な運営を実現する鍵として「介護AI」の活用が急速に進んでいます。AI技術は単なる業務の自動化に留まりません。スタッフが本来のコア業務である「人と向き合うケア」に集中できる環境を整え、サービスの質を向上させる可能性を秘めています。
本記事では、介護におけるAI活用の具体的な活用法と、それが経営課題をどう解決するかを深く掘り下げます。
目次
介護現場におけるAIの導入は、単なる業務効率化の手段ではありません。事業の持続可能性を左右する経営戦略上の重要課題となっています。差し迫った人材不足と社会的要請に応えるため、テクノロジーの活用が重要です。
いわゆる「団塊の世代」が75歳以上の後期高齢者となる「2025年問題」が現実となり、介護サービスの需要は急速的に増加しています。一方で生産年齢人口の減少により、介護の担い手は慢性的に不足しています。
厚生労働省が公表した第9期介護保険事業計画に基づく推計によれば、2026年度には約240万人の介護職員が必要とされます。
2022年度時点では約215万人の供給にとどまっているため、約25万人が不足すると見込まれていることになります。
参考：介護人材確保に向けた取組について｜厚生労働省
この深刻な需給ギャップを埋めるためには、従来のマンパワーに依存したオペレーションでは限界があります。限られた人員で高い品質のサービスを提供し続けるには、介護におけるAI活用による業務の効率化と標準化が急務です。
介護現場のスタッフは、利用者への直接的なケア以外に多くの間接業務に追われています。日々のケア記録や報告書の作成といった事務作業は、スタッフの時間を圧迫し、利用者と向き合う時間を奪う一因となっています。
介護におけるAI活用は、これらの事務的・身体的負担を軽減し、スタッフが健康的に長く働ける環境を整備するために不可欠な要素です。
介護事業者は、効率性だけでなく、サービスの「質」と「安全性」の維持・向上という社会的な要請にも応え続けなければなりません。厚生労働省も介護ロボットやAIの活用を推進しており、特に「見守り・コミュニケーション」や「介護業務支援」といった分野での技術導入を重点分野として挙げています。
介護におけるAIの活用は、ヒューマンエラーの削減、事故の未然防止、そしてデータに基づいた個別最適なケアの実現に寄与し、社会的信頼を維持するための鍵となります。
介護現場でのAI活用は、現場のさまざまな場面で活用が進んでいます。特に導入効果が顕著な「見守り」「介護記録」「ケアプラン」の3分野における具体的な活用法とメリットを解説します。
利用者の安全確保、特に夜間の見守りはスタッフにとって大きな精神的・肉体的負担です。
AI搭載の見守りシステムは、カメラやベッドに設置されたセンサーを活用し、利用者の状態をリアルタイムで把握します。
AIが利用者の離床や転倒、あるいは普段とは異なる動きを検知すると、即座にスタッフの端末へ通知が送られるため、事故の未然防止や迅速な対応が可能となります。不要な巡回が減ることでスタッフの負担が軽減され、利用者は安心して休息できる環境が整います。
介護現場では、ケアの実施後に事務所に戻り、手書きやPC入力で記録を作成する作業が常態化していました。AIによる音声認識技術は、このプロセスを根本から変えます。
スタッフはケアの合間や移動中に、スマートフォンや専用端末に向かって話すだけで記録がテキスト化されます。これにより記録業務にかかる時間が大幅に短縮されます。
KDDI株式会社の事例では、対話型AIの活用で、面談記録時間が70%削減された報告もあります。
参考：高齢者向け対話AIでケアマネジャー面談業務時間の7割削減に成功 | KDDI News Room
記録業務の自動化は転記ミスや記入漏れを防ぎ、業務の正確性を高めることはもちろん、事務作業から解放された「時間」を創出し、スタッフが利用者と直接向き合う本来のケア業務に集中できる環境を生み出します。
AIの活用は、介護サービスの根幹であるケアプランの作成支援にも及んでいます。蓄積された利用者の生活データやケア記録をAIが分析し、一人ひとりの状態に最適化されたケアプランの作成を支援する研究が進められています。
AIの活用により要介護度の改善率が向上した自治体の事例も報告されています。株式会社シーディーアイの事例では、愛媛県伊予市・西条市との実証実験において、AIの活用により要介護度の改善率が向上したという例も報告されています。
参考：CDIは、高齢者の自立支援、重度化防止を図るために愛媛県伊予市・西条市で人工知能(AI)を使った科学的介護の実証実験を実施 | 株式会社シーディーアイのプレスリリース
また、対話型AIロボットは利用者の話し相手となり、精神的な孤立感の緩和や認知機能の維持に貢献します。AIは業務効率化だけでなく、ケアの質そのものを個別最適化するパートナーとなりつつあります。
このように、介護AIの活用分野は多岐にわたり、それぞれが現場の負担軽減と利用者の安全・品質向上に直結しています。主要な活用分野を以下の表にまとめます。
| 活用分野 | 主な技術 | スタッフのメリット（負担軽減） | 利用者のメリット（安全・品質） |
|---|---|---|---|
| 見守り | 画像・センサーAI | 夜間巡視の最適化、心理的負担減 | 転倒・離床の早期発見、安全確保 |
| 介護記録 | 音声認識AI | 記録・入力業務の大幅削減 | スタッフがケアに集中できる時間が増加 |
| 移乗・介助 | AIロボット | 身体的負担（腰痛等）の軽減 | 安全な移乗サポート |
介護業界へのAIの導入には多くのメリットが期待される一方、導入を成功させるために事前に乗り越えるべき現実的な課題が存在します。これらの課題を認識し、対策を講じる必要があります。
高性能なAIシステムや介護ロボットの導入には高額な初期費用が伴います。また、月額利用料やメンテナンス費用といったランニングコストも発生します。
そのため、これらの投資に対してどれだけの費用対効果(ROI)が得られるかが重要です。
業務時間の削減や離職率の低下といった効果は、すぐには数値化しにくい場合があります。導入前にどの業務課題を解決し、どのような効果を期待するのかを明確にし、ROIを可視化する計画が不可欠です。
介護現場では多様な年齢層や経歴を持つスタッフが働いており、デジタルツールへの習熟度には個人差があります。新しいシステムを導入しても、操作が難解であったり使いこなせなかったりすれば、かえって現場の負担を増やすことになりかねません。
導入を成功させる鍵は、直感的に操作できるシステムを選定すること、そして丁寧な導入研修や継続的なサポートが充実したベンダーを選ぶとともに、社内でも推進担当者を配置するなどフォロー体制を整えることが重要です。
「AIに仕事を奪われるのではないか」「AIカメラで常時監視されるのは抵抗がある」といった、AIに対する心理的な抵抗感も導入の妨げとなる要因です。
AIはスタッフの仕事を「奪う」ものではなく、負担の大きい作業を「代替」し、スタッフがより専門性の高い「人間でなければできない仕事」に集中できるよう「支援」するツールであるという認識を共有することが重要です。
導入の目的を丁寧に説明し、現場の理解を得ながら運用を定着させていくプロセスが求められます。
これまでの介護におけるAIの活用は、施設内の「見守り」や「記録業務」に注目が集まりがちでした。しかし特に通所介護(デイサービス)事業所において、経営資源を大きく圧迫している「送迎業務」こそ、AIによって解決すべき重要な課題です。
経済産業省の調査によれば、通所介護における送迎関連業務は、介護業務全体の「約3割」と、単一の業務としては最も大きな割合を占めており、送迎業務は通所介護事業所にとって大きな負荷となっていることが伺えます。
参考：将来の介護需要に即した介護サービス提供に関する研究会報告書｜経済産業省
送迎業務は多くの場合、非効率なまま放置されがちな領域であり、効率化できれば、そのインパクトは経営全体に及びます。
送迎計画の作成は、利用者の住所、希望時間、体調、車いす利用の有無、乗降の難易度、車両の定員、交通状況など無数の変数を考慮する必要がある複雑なパズルです。
このため計画作成は特定のベテランスタッフの経験と勘に依存しがちです。
このような「属人化」は、その担当者が不在の際に業務が滞るという事業継続上の大きなリスクを抱えています。
また経験則に基づくルートが必ずしも最適とは限らず、非効率な運行による燃料費の増大や送迎時間の長時間化を招いているケースも少なくありません。
送迎業務は、事業所のスタッフが公道で車両を運転する最も事故リスクの高い業務の一つです。ひとたび事故や交通違反が発生すれば、利用者の安全を脅かすだけでなく、事業所の信用失墜や法的責任に直結します。
しかし日々の運行状況やドライバーの運転特性を管理者が正確に把握し、安全指導を徹底することは、手動の管理では極めて困難です。
前述した「送迎業務」の深刻な課題である、「膨大な業務負荷」「属人化」「安全管理リスク」を解決するために開発されたのが、パナソニック カーエレクトロニクスの送迎支援サービス『DRIVEBOSS（ドライブボス）』です。
『DRIVEBOSS（ドライブボス）』はクラウドベースのAI送迎計画自動作成サービスです。利用者の情報や車両データを登録し、送迎対象者を選択するだけで、AIが複雑な条件を瞬時に計算し、最も効率的な送迎ルートと車両の割り当てを自動で作成します。
これによりベテランスタッフの経験と勘に依存していた「属人化」の問題が解消されます。これまで計画作成に費やしていた膨大な時間が削減されるだけでなく、AIが導き出す最適化されたルートにより、総送迎時間や走行距離の短縮も期待できます。
『DRIVEBOSS（ドライブボス）』は単なる計画作成ツールに留まりません。スマートフォンと連携し、ドライバーへの安全運転支援や運行状況のリアルタイムな管理機能を提供します。
管理者は事務所にいながら各車両の現在地や運行状況を把握できます。
また危険運転の挙動を検知・記録することで、ドライバーへの具体的な安全指導が可能となり、事故や違反のリスクを大幅に低減させます。これにより安全管理とコンプライアンスの課題に対応します。
AIによって送迎業務が効率化されることの最大の価値は、それによって「時間が創出される」ことです。
送迎計画にかかる時間、ドライバーの拘束時間、運行時間が短縮されることで、スタッフは余裕を持って業務に取り組めます。
そしてその創出された貴重な時間を、本来最も注力すべき利用者への直接的な介護サービスに充当できます。
『DRIVEBOSS（ドライブボス）』の導入は業務効率化とコスト削減に留まらず、「介護の質の向上」という事業の本質的な価値を高めることにもつながります。
『DRIVEBOSS』の導入により、実際に送迎業務の課題を解決し、経営改善につなげた事例を3件紹介します。
・導入前の課題
送迎計画作成が「職人技」のような業務で、各事業所でセンター長の補佐などキーマン的な職員が担当し、計画作成と実績入力に毎日2時間程度を要していました。新しい利用者の送迎や土地勘のない職員の送迎時には、事前に現地まで車を走らせて練習が必要でした。
・導入後の効果
相模大野センターでは送迎計画の作成時間を半分に短縮し、計画作成できる人数も4人にまで増加しました。初めて訪問する利用者宅でもスマートフォン連携のルート案内機能で問題なく送迎できるようになり、業務プロセスが統一され、応援や異動があっても即戦力として業務にあたれるようになりました。
詳しくは以下のページをご覧ください。
ケアパートナー株式会社 様 │ 業務の標準化で異動者の即戦力化を実現！送迎システムのドライブボス
・導入前の課題
同法人では、送迎計画の作成がほぼ一人の職員に集中し、業務が属人化していました。送迎業務は利用者の自宅を覚える必要があり、負担に感じる職員も少なくありませんでした。
また、利用者の増減により、気づかないうちに非効率なルートで運行していることもあり、業務時間全体の2〜3割を占める送迎業務の効率化が大きな課題となっていました。
・導入後の効果
『DRIVEBOSS（ドライブボス）』の導入で、これまで1名で行っていた計画作成が4名で対応可能になり、業務の属人化が解消されました。
スマートフォンのルート案内機能があるため、経験の浅い職員でも安心して送迎業務にあたることができ、「自分にもできそう」と入社を決めた新しい職員も現れました。
今後は、従来3ヶ月から半年かかっていた独り立ちまでの期間を1〜2ヶ月に短縮することを目指しています。職員が安心して働ける環境は、人材の採用や定着、さらにはサービス品質の向上にも繋がっています。
詳しくは以下のページをご覧ください。
社会福祉法人貞徳会 様 │ 属人化の解消と職員の採用の理由に！送迎システムのドライブボス
・導入前の課題
送迎計画の作成が特定のスタッフの「経験」に頼った状態でした。すべての利用者情報を把握している担当者でなければ計画が立てられず、その担当者が不在の際には業務が滞るという深刻な「属人化」が経営課題となっていました。計画はホワイトボードで作成されており、複雑な送迎ルートの可視化も困難な状況でした。
・導入後の効果
『DRIVEBOSS（ドライブボス）』の導入により送迎ルートが地図上で可視化され、計画作成時間が短縮されました。これまで担当者の負担となっていた細かな「調整業務」がAIによって自動化され、業務全体の削減に成功しています。
詳しくは以下のページをご覧ください。
神戸中央福祉会 塩屋さくら苑 様 │ 送迎計画作成者が増えて属人化解消 送迎システムのドライブボス
介護AIは、人手不足という深刻な経営課題を乗り越えるために不可欠です。「見守り」や「介護記録」での活用は、スタッフの負担を軽減し、ケアの質を高める第一歩となります。
しかし、導入にはコストや教育の課題も伴うため、投資対効果が明確な領域からの戦略的導入が求められます。特に通所介護事業において、業務の約30%を占めながらも見落とされがちな「送迎業務」は、AIによる効率化の「盲点」であり大きなチャンスです。
この機会にぜひ『DRIVEBOSS（ドライブボス）』の詳細をご確認いただき、デイサービスの送迎業務への導入をご検討いただくことをお勧めします。
気になることがございましたら、お気軽にお問い合わせください。専門スタッフがご対応いたします。
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